奇蹟がくれた数式

 
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映画「奇蹟がくれた数式」を劇場で観てきた。第一次世界大戦中のイギリスにおける、二人の数学者―ラマヌジャンとハーディ―の研究、交流を描いた物語である。ほぼ実話なのでネタバレも何もないのだが、ここではラマヌジャンとその背景について書きたいと思う。

 

 私がラマヌジャンの名前を知ったのは、藤原正彦のベストセラー「国家の品格」に於いてそのエピソードが語られていたからだ。その項目(膨大な定理の発見、そしてその未証明、タクシー数)を読み、その名が頭の片隅に残っていた。そして今回、ラマヌジャンの映画が公開されると知り、鑑賞に至った。

 

 内容としては目新しい点は特になかった―しかし、考えさせられる点は多かった。ラマヌジャンは大学を出ていなかった。そのせいで彼は「証明」をすることがなく、彼の発見は認められるのに長い時間を要した。しかし、彼が正規の数学教育を受けていたら、果たして彼の独創性は発揮されただろうか。教育に求められる役割とは何か、考えさせられる部分だと思った。

 

 この映画で私がむしろ興味を持ったのはハーディについてだ。彼はもちろん物語のキーパーソンだが、作中で彼のパーソナルな部分については全く描かれていない。彼の著書があるらしいので、読んでみたいと思っている。

 

 タクシー数のエピソードは脚色されているが、映画の演出の方が素敵だと思った。

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プラダを着た悪魔/マイ・インターン


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 キャリアウーマンが活躍する映画は、女性の社会進出によって一定の需要が生み出され、働く女性たちの人気を得てきた。タイトルの2作は、どちらもやり手の女社長がキーマンとなる作品であり、両作には女優のアン・ハサウェイが出演している。

 

 「プラダを着た悪魔」(2006)では、実在の人物をモデルとしたファッション雑誌の鬼編集長に、アン・ハサウェイ演じる新人アシスタントが振り回される。一方「マイ・インターン」(2015)では、アン・ハサウェイがファッション通販サイトの若手社長としてキャスティングされている。一瞬この2作は連作なのかと思ったが、そんなことはなかった(おそらく制作サイドの遊び心と話題作りだろう)。

 

 働く女性にスポットを当てている点では同じだが、2作のアプローチは異なる。「プラダ」では、とにかく働くこと、有能であることが美徳とされる世界が描かれた。「マイ・インターン」では、仕事だけでなく家庭を顧みることの大切さが描かれている。10年経って、女性の社会でのあり方が変わってきた、また男性のあり方も変わってきた、ということだろうか。2作とも良作なので見て欲しいと思う。

 

 「女性が働ける社会」になったのではなくて「女性も働かなければならない社会」になってしまっただけだと思うのは私だけだろうか。

古書

 本を買うときの選択肢として、私も電子書籍を考慮するようになった。持ち運びが容易だし、読みたい部分の検索も容易だ。最近は電子ペーパーの購入も検討している。

 ただ、電子書籍は時折各社でセールを行うものの、まだ「中古」という概念が薄い。なので私は安く本を買うため、未だにBOOK-OFFやAmazonを見に行く。

 

 「ビブリア古書堂の事件手帖」のヒット以降、古書店をテーマとする作品が増えたように思う。私も古書店に多少興味を持ったので、出先で見かけたときは立ち寄るようにしている。

 以前神戸を訪れたとき、高速神戸駅の通路に古書がたくさん置いてあるのを見かけた。俳句の歌集からかなり色褪せたエロ本まで、様々な本が売られていた。(今名前を調べたら)「メトロ神戸古書の街」というらしい。いくつかの書店が通路の横にまとめて店を出していて、レトロな雰囲気を醸し出していた。f:id:BurnTheWitch:20161029215710j:plain

 また、有名ではあるが、東大や早大などの名門大学の近くには、多くの古書店が店を構えている。学生たちに学術書や小説を売り、また買うことで、一種の文化を形成してきた。古書が辿ってきた歴史は、学生が、そして街が辿ってきた歴史でもあるのだ。

 

 古書店には、店ごとに特色があり、また普段ならまず出会えない、検索しない一冊に出会える可能性がある。私もインターネットで本を買うことが多いが、たまには「書を求め、街に出て」みてもいいかもしれない。

 

 といってもやはり電子書籍は快適だ。古い書籍を安売りしてくれれば、もっと普及する(作家にも利益が出る)と思うのだけど、何かあるのだろうか。あるのだろう。

 

 

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きっと、うまくいく

 インド映画に対して、私は「すぐ踊り始める」「何か分からないけど楽しい」みたいなイメージしか持っていなかった。しかし、魅力はそれだけではないことが、この映画で分かった。

 「きっと、うまくいく」(3 Idiots)は、2009年に公開されたインド映画だ。インドのMITとも言われる大学に入学した「3バカ」が繰り広げる日々を描いた物語である。

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 この映画は確かに登場人物たちがすぐに踊り始めるし、歌ったりもする。そして、何か分からないけど楽しい。しかし、この物語の背景にあるのは、急成長するインドという国家の抱える社会問題だ。

 

 彼らは生まれる前からエンジニアになることを義務付けられていた―インドではエンジニアになることが裕福になること、幸福になることへの近道だからだ。そこに本人たちの意志が入り込む余地などない。

 理不尽な要求、理不尽な未来、理不尽な評価―そうしたものを苦にして自殺する学生も少なくない(日本も同じような状況ではある)。暗い背景の中で、学生たちは自分たちの生きる道を見つけていく。

 

 ただ、基本的には頭を楽にして、何も考えずに楽しめる映画になっている。主人公たちのアホさ、明るさ、そしてひたむきさに心動かされる。

 最後には自分の日々に対しても、「きっと、うまくいく」と思える映画のはずだ。

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